特集 〈研究室で役に立つ細胞株〉
Ⅲ.間葉系細胞株
白血球系細胞
単球・マクロファージ
マウス:TtT/M-87
井上 金治
1
1群馬大学内分泌研究所形態学部門
pp.483
発行日 1992年10月15日
Published Date 1992/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900469
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■樹立の経緯
TtT/M-87は放射性ヨードで甲状腺摘除して得られたマウスTSH産生腫瘍株(TtTb:広島大学,伊藤教授)を使用して得られたマクロファージ細胞株である。井上はTSH産生細胞の培養株の樹立をめざしてTtTbの培養を行ったが,目的としたホルモン産生細胞の増殖はきわめて悪く成功しなかった。この過程でコロニーを作って増殖する腺細胞とは異なる細胞の存在に気付き,その細胞の継代を重ねた結果,1987年にTtT/M-87の樹立に成功した。TtT/M-87は分化したマクロファージの細胞株であるが,ウイルスや放射線による形質転換を行わずに樹立された細胞株であり,正常の細胞の性質を保持し,マクロファージの研究には有効であろうと考えている。樹立者らはその後,腫瘍細胞の培養の他,動物の下垂体前葉の初代培養でも多くのマクロファージが出現する現象を認めており,下垂体前葉にはマクロファージの増殖と何らかの関係があることが考えられる。しかし,現在のところその生物学的な意義は不明である。
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