Japanese
English
特集 脳と個性
Ⅲ.“個性”の実験的理解
学習時の“個性”
“Individuality” in learning
久我 奈穂子
1
,
佐々木 拓哉
1
Kuga Nahoko
1
,
Sasaki Takuya
1
1東北大学大学院薬学研究科薬理学分野
キーワード:
個体差
,
学習と記憶
,
探索
,
マウス
,
ストレス
Keyword:
個体差
,
学習と記憶
,
探索
,
マウス
,
ストレス
pp.74-78
発行日 2024年2月15日
Published Date 2024/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425201818
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われわれは脳を対象とした研究者として,大学での講義や一般講演の場において,様々な質問を受けることがある。そのなかで最も多い疑問の一つが,「自分の学習や記憶の能力は,他者となぜ違うのか?」である。現代社会を生きるわれわれの誰もが,こうした“学習の個性(個体差)”について疑問を持ち,そのメカニズムや意義を知りたいと思っているはずである。つまり学習の個性という課題は,研究者の単なる興味を超えて,万人が知りたいテーマであると言える。では,この社会からの疑問に,現代の神経科学が正確な解答を得られているかと言えば,現実はほど遠いと言わざるを得ない。脳の学習や記憶を対象とした研究者は,常にこの課題を承知しているはずだが,生命科学の基本原則に従うと,研究結果はできるだけ画一的でばらつきが少ないほうが望ましく,学習の個性を扱うという試みそのものが脳研究の俎上に載りにくいという問題があった。
そのようななかで,平成28年度から科研費・新学術領域研究において“「個性」創発脳”領域が発足し,筆者らも本領域に参画する機会を得たことは,筆者らが学習の個性に関する新たな知見を深める重要な好機となった。本稿では,筆者らの齧歯動物を用いた研究を中心に紹介しつつ,それらの知見を基に,ヒトにおける学習の個性についても考察を試みる。
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