増大特集 革新脳と関連プロジェクトから見えてきた新しい脳科学
Ⅰ.霊長類脳科学
a)遺伝子改変技術および関連技術を用いたマーモセットの脳科学・疾患研究
マカクザルの精神神経疾患モデル
伊佐 正
1,2,3
,
尾上 浩隆
2
Isa Tadashi
1,2,3
,
Onoe Hirotaka
2
1京都大学大学院医学研究科神経生物学分野
2京都大学大学院医学研究科附属脳機能総合研究センター
3京都大学ヒト生物学高等研究拠点
キーワード:
精神疾患
,
遺伝子改変
,
霊長類
,
Disc1
,
認知機能
Keyword:
精神疾患
,
遺伝子改変
,
霊長類
,
Disc1
,
認知機能
pp.406-407
発行日 2022年10月15日
Published Date 2022/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425201556
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精神神経疾患と一言で言っても,特定の病的な化学反応によって異常タンパク質が蓄積し,特定の神経症状が発現する神経変性疾患と,複数の遺伝的背景と環境との相互作用によって認知機能が変容する精神疾患とでは,病因の解明や治療法の開発に至る過程は異なる。近年ゲノムワイド関連解析(genome-wide association study;GWAS)により,精神疾患原因遺伝子候補が複数挙がっているがいずれもオッズ比は低く,決め手を欠いている。それらの遺伝子改変マウスを作製して,種々のエンドフェノタイプを詳細に解析する研究は有意義だが,マウスの行動解析がヒトの精神疾患の症状を正しく反映するかについて疑問を持つ研究者は少なくない。一方で,認知機能の表現がヒトに近い霊長類を用いて遺伝子改変個体を作製する趨勢があり,現在中国が一歩先行している。
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