特集 リソソーム研究の新展開
特集「リソソーム研究の新展開」によせて
小林 妙子
1
1京都大学大学院生命科学研究科生体制御学
pp.190
発行日 2022年6月15日
Published Date 2022/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425201499
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リソソームはご存じのとおり細胞内の最終分解を担うとても小さなオルガネラである。内部には数多くの加水分解酵素が含まれており,細胞内外の不要な物質を分解し,再利用する。この不要物の分解処理システムは,すべての細胞に必要な普遍的かつ必須のプロセスである。ヒト疾患においても,リソソーム内の酵素などの機能欠損に起因するライソゾーム病に代表されるように,リソソーム機能の重要性が証明されている。しかし,教科書などでリソソームについて調べてみると,リソソームの機能については,“細胞内消化”と説明されており,オートファジーやエンドサイトーシスなどのリソソームへの運搬経路と共にその役割が紹介されている。“リソソーム”はこれらの経路を支えてくれる名脇役のようにも思える。
しかし,近年のリソソーム研究は幅広い分野において発展を見せているとてもエキサイティングな領域である。例えば,細胞内の栄養状態を伝達するシグナリングハブとしての機能,細胞周期における機能,がんなどの疾患や個体発生および加齢に伴う機能など,リソソームの新機能についての報告は近年飛躍的に増加傾向にある。まさに主役である。一方で,これらのリソソーム機能をメイントピックとして取り上げている特集は残念ながら少ない。原著論文を読んでもリソソーム機能の多機能性からか解析ツールも多様であり,複雑で理解しにくいところもあるかもしれない。リソソームについてもう少し踏み込んで勉強したいと思われた方に薦められるものがあれば,との思いから本企画を提案させていただいた。
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