Japanese
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特集 DNA修復による生体恒常性の維持
Ⅱ.DNA修復と疾患
早期老化における染色体不安定性
Chromosomal instability leading to premature aging
嶋本 顕
1
Shimamoto Akira
1
1山口東京理科大学薬学部
キーワード:
老化
,
RecQヘリカーゼ
,
DNA修復
,
疾患特異的iPS細胞
,
リボソームDNA
Keyword:
老化
,
RecQヘリカーゼ
,
DNA修復
,
疾患特異的iPS細胞
,
リボソームDNA
pp.138-142
発行日 2022年4月15日
Published Date 2022/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425201485
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早老症ウェルナー症候群(Werner syndrome;WS)の原因遺伝子WRNが同定され1),この老化を抑制する遺伝子の研究が世界中で展開して25年が経過した。この間に多くの研究者がこの研究に参画し,WRNがコードするDNAヘリカーゼが実に様々なタンパク質と相互作用し,複製,修復,組換え,転写からヒストン修飾などに関与して,塩基レベルからクロマチンレベルにわたって染色体安定性を維持していることが明らかになった2,3)。これらの染色体イベントには主体となって機能する酵素/タンパク質が存在するが,WRNヘリカーゼはこれらのイベントの脇役/サポーターとしてfine-tunerの役割を果たしており,その機能異常は染色体不安定性を誘発してわずかな構造変化として染色体に蓄積し,全身性の細胞機能の破綻(タンパク質恒常性喪失,ミトコンドリア機能不全,分裂寿命の短縮,分化機能の低下など)を引き起こし,早期老化症状となって現れる3)。
一方,病態発症のメカニズムを解明するためには,がん細胞や線維芽細胞などの株化された細胞を用いた研究では限界があることから,WS患者細胞から樹立したiPS細胞を用いて,種々の組織細胞に分化誘導し,病態の再現と再生医療への応用を目指した研究も進められている4,5)。また,より厳密なメカニズム解析を行うため,ゲノム編集で変異WRN遺伝子を修正したiPS細胞が樹立されている6)。
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