特集 細胞高次機能をつかさどるオルガネラコミュニケーション
特集「細胞高次機能をつかさどるオルガネラコミュニケーション」によせて
中野 明彦
1
1理化学研究所光量子工学研究センター
pp.526
発行日 2018年12月15日
Published Date 2018/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200912
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オルガネラ研究は長い歴史を持つが,そもそもオルガネラという概念が,細胞核と細胞質という粗い分類から一歩進化したのは,20世紀の電子顕微鏡の発明によって,従来の光学顕微鏡では見えなかった微細な構造が見えるようになったからにほかならない。しかし,更に時代が進むと,高い解像力で生きたままの細胞内のダイナミクスを観察したいというのがオルガネラ研究者の悲願となった。それが,GFPなどの優れた蛍光プローブの開発と光学顕微鏡技術の革新的な進歩によって,いま可能になりつつある。超解像のライブイメージングである。
光の回折限界を超え,微小な構造を生細胞で観察できるようになると,それまで空想しかできなかった新しいオルガネラ像が見えてくる。オルガネラが,1つの機能単位として均一なものではなく,そのなかに更に機能分化したゾーンが存在するという考え方である。例えば,小胞体は,粗面小胞体と滑面小胞体に分類され,それぞれ異なる機能を持つということは古くから知られていたが,更に応答,輸送,接触など,機能の異なる複数のゾーンが存在することが明らかになりつつある。同様に機能を異にするゾーンは,ゴルジ体,ミトコンドリアなど,様々なオルガネラにみられ,それらがストレスに対する応答,オルガネラ間接触による連携,そして輸送分子の選別を行う選別輸送といった様々に分化した役割を担っていると考えると,オルガネラの機能をよりよく理解できる。すなわち,「オルガネラ・ゾーン」という新しい概念の誕生である。
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