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薬理・生理学領域では基礎研究の成果を社会に還元する場合,わかりやすい例として創薬があるが,新規化合物を合成し新薬にまで育てるには,多額の経費をかけ,現在のサイエンスをもってしても10年以上の歳月が必要とされる。この長さは,今すぐにでも薬を必要とする患者にとっては耐え難い。そこで,科学の恩恵をいち早く患者に届けるためには,新薬の開発に努力する一方で,患者救済の何らかの工夫が必要となる。その一つとして,国が既に承認した医薬品(既承認薬)の中から創薬シーズを見つけることを考え「EcoPharma:エコファーマ」として提案した(Pain Research, 2007)1,2)。既承認薬にはヒトへの安全性に関する膨大な基礎資料があるため,それらを利用すれば開発時間が短縮される。患者に対しては早く薬を提供できるし,製薬企業からすれば既存薬の新規適用拡大(リポジショニング)として薬の市場価値を高めることにつながる。
さて,グリーンケミストリーは広く知られている地球環境に優しい化学合成法であるが,九州大学薬学研究院ではエコファーマとグリーンケミストリーの研究者がアカデミア創薬のために協力し合い,両者を融合させた「グリーンファルマ」を実践している。このグリーンファルマ研究は,企業が経済原理から手を出しにくい希少疾病用医薬品(オーファン・ドラッグ:患者数が少なく治療法も確立されていない病気の治療薬)開発にも積極的に挑戦できることから,本学におけるアカデミア創薬の基軸としている。本稿では,ヒトと地球に優しい「グリーンファルマ」創薬について,モルヒネも効かない人類史上最悪の痛みである神経障害性疼痛に対する治療薬を例にとり,概説する。
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