Japanese
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特集 大脳皮質—成り立ちから機能へ
睡眠時におけるトップダウン入力と感性の記憶
Top-down inputs during sleep for perceptual memory
平井 大地
1
,
宮本 大祐
1,2,3
,
村山 正宜
1
Hirai Daichi
1
,
Miyamoto Daisuke
1,2,3
,
Murayama Masanori
1
1理化学研究所脳科学総合研究センター行動神経生理学研究チーム
2名古屋大学環境医学研究所神経系分野Ⅱ
3日本学術振興会
キーワード:
大脳新皮質
,
知覚
,
体性感覚野
,
記憶の固定化
,
睡眠
Keyword:
大脳新皮質
,
知覚
,
体性感覚野
,
記憶の固定化
,
睡眠
pp.69-73
発行日 2017年2月15日
Published Date 2017/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200579
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われわれは五感を通して周りの世界を知覚する。物に触れたときに得られる皮膚感覚の情報は,脊髄や視床を経由し大脳新皮質の第一体性感覚野(S1)に到達することが,これまでの解剖学的・生理学的研究により知られている。S1に到達した情報は,より高次な脳領域に伝えられる。このように低次領域から高次領域への入力を“ボトムアップ入力”と呼び,特に皮膚など感覚器からの外界入力を外因性ボトムアップ入力と呼ぶ。また反対に,高次領域から低次領域への入力を“トップダウン入力”と呼ぶ。知覚学習によりトップダウン方向の情報の連絡が強化されることが霊長類1)や齧歯類2)において知られており,記憶を思い出す想起への関与が示唆されてきた。では,知覚体験を想起の可能な記憶として固定化する過程においてもトップダウン回路は関与するのであろうか?
記憶の固定化には睡眠の関与が知られている。感覚情報などの外部からの入力が少ない睡眠時の脳内において,内因的な情報により知覚記憶が定着すると考えられている3)。しかし,具体的にどの脳回路が知覚記憶の定着に関与するかは不明であった。筆者らは2015年,大脳新皮質内の第二運動野(M2)という高次な領域からS1への“トップダウン入力”が,マウスの皮膚感覚の正常な知覚に関与することを明らかにした4)。マウスにおいてこのトップダウン入力を抑制すると,皮膚感覚の正常な知覚が阻害されることが見いだされた。そこで筆者らは,トップダウン回路が知覚記憶の定着に関与する可能性を探った5)。
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