Japanese
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特集 時間生物学の新展開
中枢時計としての視交叉上核
Molecular mechanism of the master clock in the suprachiasmatic nucleus
黒岩 沙也華
1
,
岡村 均
1,2
Kuroiwa Sayaka
1
,
Okamura Hitoshi
1,2
1京都大学大学院薬学研究科システムバイオロジー分野
2CREST
キーワード:
視交叉上核
,
時計遺伝子
,
cAMP
,
GPCR
,
時差
Keyword:
視交叉上核
,
時計遺伝子
,
cAMP
,
GPCR
,
時差
pp.517-521
発行日 2016年12月15日
Published Date 2016/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200543
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Ⅰ.時計遺伝子と視交叉上核
生体リズムの理解は,時計遺伝子(clock genes)が発見されたことで大本から変わってしまった1,2)。時をつかさどる時計遺伝子は,通常の細胞にある数個の転写因子の一群であり,数千もの遺伝子を周期的に発現させて,細胞周期,エネルギー代謝を時間的オーダーで管理している。すなわち,時を刻む時計遺伝子の時間装置は全身の細胞にあり(細胞時計),生体リズムは全身の細胞で出現することがわかったのである。では,これまで生体リズムの発振中枢とされてきた視交叉上核(suprachiasmatic nucleus;SCN)の役割は何なのであろうか?
たとえ全身の細胞に時間装置があっても,これまでに得られた,「SCNを破壊すると生体リズムは完全に止まる」というSCNの重要性を示すデータは覆らない3,4)。完全に全身の時計が止まっているCry-nullマウス5,6)に野生型(WT)マウスのSCNを移植すると,24時間周期の行動リズムが回復する7)。すなわち,SCN以外の組織には時計がなくても,SCNの時計のみが24時間周期を回復すると,個体としての24時間周期の行動リズムは惹起されるのである(図1)。以上の事実は,SCNには,時計遺伝子以外の生命階層でのリズム発振の,未知の機構があることを示唆している。
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