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特集 新興・再興感染症と感染症対策
A.ウイルス
インフルエンザ─動物からヒトへ:新型ウイルス出現への備え
Influenza:from animal to human;preparedness for the pandemic influenza virus
迫田 義博
1,2,3
Sakoda Yoshihiro
1,2,3
1北海道大学大学院獣医学研究科微生物学教室
2北海道大学国際連携研究教育局(GI-CoRE)
3国際獣疫事務局(OIE)高病原性鳥インフルエンザレファレンスラボラトリー
pp.301-304
発行日 2015年8月15日
Published Date 2015/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200178
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インフルエンザはインフルエンザウイルスの感染によって起こるヒトと動物の呼吸器感染症である。ヒトにはA型,B型およびC型インフルエンザウイルスが,動物にはA型インフルエンザウイルスが主に感染する。インフルエンザウイルスの大きさは直径80-120nmで,電子顕微鏡を用いて観察することができる(図1)。A型インフルエンザウイルスは,その表面糖蛋白質のヘマグルチニン(hemagglutinin;HA)およびノイラミニダーゼ(neuraminidase;NA)の抗原性に基づき,H1からH16およびN1からN9の亜型に分類される1)。A型インフルエンザウイルスの自然宿主は野生のカモ類で,前述のすべての亜型のウイルスが分離される(図2)。ヒトでは現在,H1N1およびH3N2亜型のウイルスが流行している(図3)。
インフルエンザは,急性の呼吸器疾病しか引き起こさず,感染後1週間程度で急速に症状は改善する。現在は迅速診断法や治療薬の普及に伴い,治療は容易である。しかし,ヒトの世界に新しい亜型のインフルエンザウイルスが定着すると,世界的流行(パンデミック)を引き起こすことになり,社会生活に影響を及ぼす。本稿ではヒトと動物のインフルエンザの概要を紹介すると共に,鳥インフルエンザウイルスのヒトへの感染例や新型インフルエンザウイルス出現の備えについて紹介したい。
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