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特集 特殊な幹細胞としての骨格筋サテライト細胞
衛星細胞による運動神経支配の再構築制御仮説
Possible implication of satellite cells in regenerative moto-neuritogenesis
辰巳 隆一
1
Ryuichi Tatsumi
1
1九州大学大学院農学研究院 資源生物科学部門 動物・海洋生物資源学講座 畜産化学分野
pp.122-131
発行日 2013年4月15日
Published Date 2013/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101424
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骨格筋の肥大・再生は,① 衛星細胞の活性化・増殖・分化・損傷部位への融合による筋細胞(細長い巨大な細胞なので“筋線維”と呼ばれる)の修復,および衛星細胞(サテライト細胞)同士の融合による新しい筋線維(新生筋線維)の形成,② 運動神経末端の筋線維への接着,③ 疲労耐性やエネルギー代謝などの筋特性に深くかかわる筋線維型(速筋型・遅筋型)の決定,④ 毛細血管網の再構築,の四つの現象を基盤としている。① は衛星細胞の重要な機能として古くから多くの研究対象になっており,筆者らの研究グループは衛星細胞の活性化・休止化機構に関して,物理刺激で作動する時系列制御機構を明らかにした(概要は後述)。
一方,これらの研究過程で,分化期に移行した衛星細胞が神経軸索成長ガイダンス因子,semaphorin 3A(Sema3A)を合成・分泌することを見出し,上記 ② に関して,運動神経末端がいつ・どこに・どのように再生筋線維や新生筋線維に接着するかを衛星細胞が能動的に制御している可能性を初めて提起した1,2)。本稿では,この着想に至った実験データの概略を紹介する。また,Sema3Aの発現・分泌が,衛星細胞の活性化・休止化因子である肝細胞増殖因子(HGF)で特異的に誘導されることから,“物理刺激を引き金として,筋線維構造と運動神経支配の回復がHGFにより時系列的に協調進行する”という“プログラムド メカノバイオロジー”についても併せて概説する。
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