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特集 リンパ管
胸管を形成するリンパ内皮細胞の由来とそれを解剖学的構造へ導くメカニズム
The origin of lymphatic endothelial cells and the mechanism which guides them to the gross anatomical structure to generate thoracic duct
磯貝 純夫
1
,
下田 浩
2
Sumio Isogai
1
,
Hiroshi Shimoda
2
1岩手医科大学 医学部 解剖学講座 人体発生学分野
2弘前大学大学院 医学研究科 生体構造医科学講座
pp.584-591
発行日 2012年12月15日
Published Date 2012/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101396
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胸管の損傷は乳糜胸症など重篤な合併症を引き起こすことから,癌転移に伴う胸部外科的処置などで変異に富んだ胸管の分布形態には特別な注意が払われるようになった。MRI技術の進歩は造影剤を用いず比較的容易に生体で胸管を三次元的に映像化することを可能とし,その重要性は増している。これらのなかに先天的な胸管の形態形成異常を思わせる症例が含まれており,その解析が行われつつある。しかし,胸管をはじめとする集合リンパ管の形態形成メカニズムは全くわかっていない。リンパ管内皮細胞の起源については大静脈から発芽するとした遠心説と,由来不明の間充織細胞が囊胞を形成して合流し静脈へ二次的に交通するとした求心説,さらにこれらの折衷説がある。分子発生学的な根拠から最近の研究者の多くは遠心説を支持するが,集合リンパ管系の解剖学的構造の形成過程とメカニズムを詳細に探るとき具体性を欠く。遠心説を支持する研究者は末梢リンパ管網からのリモデリングを集合管形成のメカニズムとして挙げるが,発生初期にリンパ流が起こす“ずり応力(shear stress)”がリンパ管内皮の分化とリンパ管内皮あるいはその前駆細胞を解剖学的構造へ誘導するとは考えにくい。“脊椎動物のリンパ管の内皮は何に由来し,どのようなメカニズムで胸管(集合管)の解剖学的基本構造を作り上げていくのか”リンパ管研究のための新しいモデル動物小型魚類を用いてこの謎に挑む。
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