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●細胞膜タンパク質の分解;ユビキチン化-リソソーム分解経路
生体内のタンパク質はたえず合成,分解を繰返し,動的に制御されている。その分解過程は分解を担うプロテアーゼの種類の違いや,また,それらが機能する細胞内小器官へ基質が到達するまでの系の違いなどにより分解経路として体系的に分類できる。細胞膜タンパク質に限っては,① カルパインによる分解経路,② ユビキチン(Ub)化をシグナルに開始されプロテアソームにより分解を受ける経路,③ 同じくUb化が引き金となりendosomal sorting complex required for transport(ESCRT)系を経てリソソームにて分解を受ける経路の三つの分解経路が挙げられる。本稿では,なかでも③の分解経路をUb化-リソソーム分解経路と称し,これを紹介したいと思う。
リソソームは1950年代半ばと比較的早い時期に同定されたものの,どのようにして分解されるべきタンパク質のみが選別されリソソームへと輸送されるのか,という疑問が長い間研究者の頭を悩ませていた。これに一つの明確な解答を与えたのがUb化-リソソーム分解経路の発見であり,今世紀幕開けにかけてのことである1)。本経路において細胞膜タンパク質はUb化を皮切りに内在化し,ESCRT系によって認識され,同系を経る過程で形成されるmulti-vesicular body(MVB)に取り込まれた後,MVBがリソソームに融合することで最終的にリソソーム内のプロテアーゼにより分解を受ける。このスキーム中で一点留意してほしいのがUb化と内在化の順序である。最もよく研究されているepidermal growth factor receptor(EGFR)などを除き,多くの場合どこでUb化を受けているのかは明らかとなっていない。そのため可能性は示されているものの,細胞膜上でUb化を受けた後に内在化するというスキームの普遍性については議論が続いている。しかしながら,ESCRT系が基質のUb化部位を認識し,これを皮切りに進行するという点は多くのエビデンスによって支えられており,本経路におけるUb化の重要性は明確である。
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