特集 細胞の分子構造と機能―核以外の細胞小器官
7.リソソーム
トランスフェリン受容体の恒常的分解を制御する低分子量GTPase Rab12
松井 貴英
1
,
福田 光則
1
Takahide Matsui
1
,
Mitsunori Fukuda
1
1東北大学大学院 生命科学研究科 膜輸送機構解析分野
pp.512-513
発行日 2012年10月15日
Published Date 2012/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101376
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われわれの体を構成する細胞は恒常性の維持や細胞外からの刺激に応答するため,様々な受容体タンパク質を細胞膜に発現させている。これらの受容体は恒常的に細胞膜に存在するわけではなく,リガンドの結合により活性化するとエンドサイトーシスされ,細胞内に輸送される。エンドサイトーシスされた受容体のその後の運命であるが,これまで主に二つの輸送経路の存在が知られている。一つは初期エンドソーム(EE),後期エンドソーム(LE)を通って最終的にリソソームへと運び分解する“エンドサイトーシス経路”,そしてもう一つがEE,リサイクリングエンドソーム(RE)を通って再び細胞膜へと戻し,再利用する“リサイクリング経路”である(図)。
では,リサイクリング経路をたどる受容体はいつまでも再利用され続けるのだろうか。例えば,エンドサイトーシスされた受容体はエンドソーム内の酸性pHによりダメージを受けると予想される。このようなダメージを受けた分子をいつまでも再利用し続けることは非効率的で,恒常性の維持という観点からも考えにくい。つまり,リサイクリング経路をたどる受容体にも他の細胞内分子と同様に品質管理(産生と分解)機構が存在すると考えられる。しかしながら,リサイクリング経路をたどる受容体の分解に関する知見はこれまでほとんどなかった。
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