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●オートファジーのダイナミクス
オートファジーは細胞質成分をリソソームに輸送し分解する細胞内分解系である。オートファジー(autophagy)という名前は,ギリシア語の「自己(auto)+食べる(phagy)」を語源としてChristian de Duveが1963年に名付けた1)。これまでにオートファジーの種類として,マクロオートファジー,ミクロオートファジー,シャペロン介在性オートファジーの3種類が報告されている2)。マクロオートファジーは小胞を押しつぶしたような形状の隔離膜が細胞質中に出現することにより始まる(図)。隔離膜は細胞質成分を取り囲みながら伸張し,その先端が融合することで直径約1μmの二重膜のオートファゴソームとなる。その後リソソームと融合し,内容物は分解され,一重膜のオートリソソームとなる。分解産物は再利用される。ミクロオートファジーはリソソームの膜自体の陥入により細胞質成分を直接取り込む。シャペロン介在性オートファジーは基質タンパク質をリソソーム内へ直接透過させる。
最も大規模な分解経路であるマクロオートファジーの分子機構に関しては,酵母を用いた解析からこれまでに30種類以上のオートファジー関連分子(Atg分子)が同定されており,哺乳類でも多くは保存されている。これらは機能的な役割からAtg1/ULK1複合体,クラスⅢPI3キナーゼ複合体,Atg9,Atg2-18複合体,Atg12-Atg5結合体,Atg8/LC3-PE結合体などに分類される。これらの分子機能の詳細に関しては他稿に譲り,本稿では哺乳類のマクロオートファジー(以下,オートファジーと呼ぶ)の制御機構および生理機能について概説する。
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