特集 細胞の分子構造と機能―核以外の細胞小器官
3.ゴルジ体
ゴルジ体の膜交通
黒川 量雄
1
,
中野 明彦
1
Kazuo Kurokawa
1
,
Akihio Nakano
1
1理化学研究所 中野生体膜研究室
pp.400-403
発行日 2012年10月15日
Published Date 2012/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101331
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真核生物の細胞内には核,小胞体,ゴルジ体,リソソーム(液胞),ミトコンドリアなど様々な膜で区切られたオルガネラが存在し,これらがそれぞれ固有の機能を果たすことによって細胞の生命活動を維持している。そのためには多種多様なタンパク質が個々のオルガネラに局在し,正常に機能することが重要である。新たに合成された膨大な数と種類のタンパク質を正しくそれらが機能すべき場所である目的地へ運ぶために,また,いったん目的地に達したのちにも時々刻々とその局在を変化させて機能を果たすタンパク質を運ぶために,真核生物はタンパク質を正確に運ぶ輸送システムを獲得した。そのなかでも重要なものの一つが,オルガネラ間を小さな膜小胞などの膜を介してタンパク質を輸送する膜交通(membrane traffic)のシステムである。膜交通は輸送小胞が供与オルガネラ膜から出芽し,細胞内を移動し,標的オルガネラへ繋留・膜融合するという一連の過程によって,「積荷」である各タンパク質をそれぞれの目的地によって選別し輸送するシステムである。この膜交通で中心的な役割を果たすオルガネラがゴルジ体である。ゴルジ体は分泌経路やリソソーム・液胞経路で働くタンパク質を選別輸送するキーステーションであり,最近,エンドサイトーシス経路でも関与が報告されているオルガネラである。
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