特集 細胞の分子構造と機能―核以外の細胞小器官
3.ゴルジ体
哺乳動物細胞ゴルジ体の細胞周期依存的ディスアッセンブリー
加納 ふみ
1
,
村田 昌之
1
Fumi Kano
1
,
Masayuki Murata
1
1東京大学大学院 総合文化研究科 生命環境科学系
pp.404-407
発行日 2012年10月15日
Published Date 2012/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101332
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ゴルジ体はエキソサイトーシス経路とエンドサイトーシス経路を結びつけるハブ的オルガネラである。ゴルジ体の機能は小胞体で合成された分泌タンパク質や膜タンパク質の修飾(糖鎖付加や硫酸化など)と,そのタンパク質を目的の膜系やオルガネラに輸送するための選別である。その装置としての機能を十分に発揮するため,ゴルジ体はたえず膨大な量の膜やタンパク質成分の流入と流出によるダイナミックな膜のフローに晒されながら,(少なくとも)哺乳動物細胞の間期ゴルジ体は核近傍の層板構造とネットワーク構造からなるその特徴的な形態を保持し続けている。
一方,細胞分裂期(M期)のゴルジ体はその特徴的な構造をドラスティックに変化させる。つまり,一度その固有で安定な形態を壊し,娘細胞内で再構築する。ゴルジ体がエンド-エキソサイトーシスというメンブレントラフィックの要衝に位置するオルガネラであることを考えれば,このゴルジ体の細胞周期依存的なディスアッセンブリー(分解:disassembly)過程とリアッセンブリー(再構築:reassembly)過程はおそらく,① ゴルジ体自身が持つ構造維持装置の制御のもと,② ゴルジ体を中心としたメンブレントラフィックによる膜成分の流入・流出とうまくカップルして行われていると予想される。本稿では,その点に注目した細胞分裂期におけるゴルジ体ディスアッセンブリーの分子機構について概説する。
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