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特集 小脳研究の課題(2)
孤児受容体が明らかにした新しいシナプス形成原理―Cbln1とGluD2
The orphan pair Cbln1 and GluD2 reveals a new synapse formation mechanism
柚﨑 通介
1
Michisuke Yuzaki
1
1慶應義塾大学 医学部 生理学
pp.11-19
発行日 2012年2月15日
Published Date 2012/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101254
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神経回路の基本的な機能は,シナプスを介した情報の伝達と貯蔵にある。したがって,シナプスがどのように形成され,そして神経活動に応じて改変・維持されるかという問題は神経科学の中心的課題の一つである。近年,NeurexinやNeuroliginなどのシナプス形成・維持を制御する分子群(シナプスオーガナイザー)が数多く同定された。精神発達遅滞や自閉症などの数多くの精神神経障害がシナプスオーガナイザーをコードする遺伝子の異常に起因することも明らかになってきており,これらの分子群の機能を解明することの重要性が示されている1)。
小脳は神経回路とともに,個体レベルにおける回路の入出力と行動との関係が最もよくわかっている中枢領域の一つである。小脳失調を示す突然変異マウスや遺伝子欠損マウスも多く存在し,これらのマウスを解析することによって,小脳神経回路のシナプス形成原理についてさまざまな知見が得られている2)。本総説では,平行線維-プルキンエ細胞シナプス形成機構に焦点を当て,特に近年飛躍的に進展を遂げたCbln1によるシグナリングを中心に簡単にまとめる。各分子についてのより詳しい解説については他の総説を参照いただきたい3,4)。さらに,「小脳研究の課題」という特集であることを踏まえ,この研究分野における課題についても考察する。
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