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連載講座 老化を考える・8
クロトーマウスにみる肺の加齢変化と呼吸器疾患
Investigation on the pulmonary aging and diseases in klotho mice
石井 正紀
1
,
山口 泰弘
1
,
大内 尉義
1
Masaki Ishii
1
,
Yasuhiro Yamaguchi
1
,
Yasuyoshi Ouchi
1
1東京大学大学院 医学系研究科 加齢医学講座
pp.574-580
発行日 2011年12月15日
Published Date 2011/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101246
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呼吸器系は形態および機能上,加齢による影響を最も顕著に受ける臓器系の一つである。肺を取り囲む胸郭や骨格筋の加齢変化も加わって,例えば日本呼吸器学会の集めた健常な日本人の統計では,20歳台男性の平均肺活量4.96lに対して,70歳台男性の平均肺活量は3.22lになる。身長の要素を除いても,肺活量はおよそ20ml/年のスピードで低下する1)。あわせてCOPDや肺炎,肺癌など多くの呼吸器系疾患が加齢に伴って増加する。
しかし,肺は外界に直接開口しているため,加齢に伴って生じる生理的老化と喫煙や粉塵などの暴露によって修飾される病的老化をヒトで区別することは極めて困難である。また,ヒトで肺の老化を縦断的に研究する場合には少なくとも40年以上の年月を必要とし,一人の研究者が反復して検討することは困難である。そこで,ヒトの肺の老化の特徴を呈する動物モデルが研究のために重要である。Klotho(クロトー)遺伝子ホモ欠損マウス(クロトーマウス,Klothoマウス)は,約4週間という短期間のうちに骨粗鬆症,動脈硬化,性腺の萎縮,異所性石灰化,皮膚の萎縮などヒトの老化兆候に似た表現型を呈する。本稿では,われわれによるKlothoマウスの肺の解析を通して肺の生理的老化である老人肺について概説し,さらに肺の老化に関する今後の展望を述べたいと思う。
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