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脳は主に神経細胞(ニューロン)とグリア細胞(アストロサイトやミクログリア)から構成される。なかでも神経細胞は種類によって形や働きが大きく異なる。例えば,形の違いでは投射型ニューロンと介在性ニューロン,働きの違いでは興奮性ニューロンと抑制性ニューロンがよき例である。これら個性を持った神経細胞は軸索と呼ばれる神経突起を伸ばし,他の神経細胞の樹状突起などと接合することにより電気信号(活動電位)を神経伝達物質による化学信号に変えて情報を伝達する。胎生期には遺伝情報により,また,生後には遺伝情報に加え環境情報に応じて形成された複雑な神経回路は,上述の接合部位・シナプスを介して正常な脳機能の調節・制御のために維持されている。そこで,記憶や学習などに代表される高次機能や精神疾患の病態に関わる神経回路を構成する個々の細胞の役割を知るために,免疫組織化学,電気生理学,細胞分子生物学など多くの手法を用いた研究が進められている。しかし,これらの方法では神経回路に散在する同種の細胞に発現する遺伝子やタンパク質群の機能を網羅的に調べることは容易ではない。
この問題解決法のひとつとして,筆者らは,近年神経系領域においても神経幹細胞の分離や解析で用いられるようになってきたフローサイトメトリーと呼ばれる技術を,細胞の特性解析や純化の方法として注目している。細胞の大きさや蛍光標識により識別できる細胞群を自動的かつ大量に分取分析できるフローサイトメトリーは,免疫学の分野では古くから浮遊細胞の解析に用いられてきた技術である。ここでは,フローサイトメトリーの特徴とこの技術を用いてマウスの脳組織から標的神経細胞を分離する方法について紹介する。
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