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セマフォリン分子群およびプレキシン分子群について
セマフォリンファミリーは1990年台初頭に,神経系の発生過程における軸索反発因子として同定された分子群であるが,近年,器官形成,血管新生,癌の進展など神経系以外への関与が示されるとともに,ここ数年の筆者らの研究グループにより免疫系でも重要な役割を担っていることが明らかとなり,その機能は生体内において非常に多岐にわたることが明らかとなってきている。
セマフォリンはこれまで,ハエや線虫などの原始的な生物からわれわれヒトに至るまで,30種類近くのメンバーが同定されている。750~1000のアミノ酸残基からなっており,細胞外にファミリー間で保存されたセマドメインという領域を有することを構造上の大きな特徴としている。このセマドメインはファミリー間のアミノ酸レベルで30-40%の相同性を示し,システイン残基のN型糖鎖付加部位が保存されている。Semaは現在までに七つのクラスに分類されており,その中で特にSema3とSema4のクラスが最もよく研究されている。クラスにより分泌型と細胞膜結合型があり,Sema3は分泌型で,Sema4は細胞膜1回貫通型である。セマフォリン分子の受容体としてはNeuropilin(NP)やPlexinファミリーに属する分子群がよく知られている。たとえばSema4D,Sema6D,A39RといったセマフォリンはそれぞれPlexin-B1,Plexin-A1,Plexin-C1に直接結合する。NP-1とNP-2はclass Ⅲのセマフォリンに結合するが,そのシグナル伝達はNPと受容体複合体を形成しているクラスA群のPlexin分子によって担われている。また神経系や血管系,上皮系ではセマフォリン分子群は細胞骨格に影響するシグナルを伝達し,形態形成に深くかかわっていると考えられており,これらの細胞内シグナル伝達経路として,Rho,Racなどのsmall GTPaseの関与が報告されている。
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