特集 シナプスをめぐるシグナリング
4.Gタンパク
匂い受容器に発現するGαq/Gα11
岩佐 達郎
1
Tatsuro Iwasa
1
1室蘭工業大学 しくみ情報系領域
pp.422-423
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101032
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化学物質に対する感覚は「味;味覚」と「匂い;嗅覚」とが代表的なものであるが,「フェロモン」と呼ばれる化学物質は「匂い」とは異なり,鋤鼻器と呼ばれる受容器にある受容体に受容される。「匂い」の感覚受容では,嗅覚受容器ニューロンに発現する特異的なGPCR,嗅覚受容体が匂い分子を受容し,それに続いて,Golf,タイプⅢアデニル酸シクラーゼ(ACⅢ)が活性化され,産生されたcAMPによってヌクレオチド依存性チャネルが開口し,嗅覚受容器ニューロンの脱分極性応答を引き起こすことが明らかになっている。しかし,一部にはcAMPに応答せず,イノシトール1,4,5トリスリン酸(IP3)に応答する嗅細胞の存在することも報告されている。また,フェロモン受容時のセカンドメッセンジャーとして,cAMPよりはIP3が作用しており,Gαi,Gαo,Gαq/Gα11を介するシグナル伝達系が関与していると報告されている。
魚類においてはこのような匂い受容器と鋤鼻受容器は解剖学的には分かれておらず,両生類以上で初めて分離して観察される。両生類アカハライモリ(Cynopus pyrrhogaster)は繊毛と微絨毛を持つ神経細胞を嗅上皮に持ち,これは魚類の嗅上皮の特徴を残している。一方,鋤鼻上皮の神経細胞は四肢動物の鋤鼻神経細胞と同様に微絨毛のみを持つ。アカハライモリは主嗅覚系および副嗅覚系を進化的側面から研究するには優れた対象であると思われる。ここでは,アカハライモリの嗅上皮および鋤鼻上皮におけるGαq/Gα11の発現分布について調べた結果を解説する。
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