老人たちのいる風景・5
生活の匂い
M
1
1老人看護を考える会
pp.593
発行日 1983年5月1日
Published Date 1983/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922962
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昨夜は冷たい北風が吹きました.庭は枯れ葉でいっぱいです.まだ薄暗い午前6時,ホームの老人たちの朝が始まります.ほうきで枯れ葉を掃く老人の姿がひとり,ふたり.一方には,七輪で炭をおこしている老人がひとり,ふたり,朝もやの中で動いています.のどかな朝です.枯れ葉を掃く音.枯れ葉の匂い.炭をおこすうちわの音.煙の匂いがあります.パタパタとはたきをかける音.雑巾をしぼる音.掃除に立ち回る老人たちの足音があります.
掃除が終わるころには,七輪にかけたお湯も沸きます.沸きたてのお湯でお茶を飲んでいると,朝食の時間になります.ここには,生活の匂いと音と活気があります.午後になると,シュシュシュシュ!圧力鍋の煮える音がしだしました.玄米を炊く音です.‘玄米は健康のみなもと’と,87歳のおじいさんは語ります.こんどはおいしい匂いがしてきました.野菜の煮物ができたようです.フライパンを持った,おじいさんがやってきました.3時のおやつに,お好み焼を作るのだそうです.ガス台の回りは,大にぎわいです.ここにも,生活の匂いと音と活気があります.
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