特集 シナプスをめぐるシグナリング
2.トランスポーター
グルタミン酸トランスポーター
相田 知海
1
,
田中 光一
1
Tomomi Aida
1
,
Kohichi Tanaka
1
1東京医科歯科大学大学院 疾患生命科学研究部 難治疾患研究所 分子神経科学分野
pp.398-399
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101022
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グルタミン酸は哺乳類中枢神経系における主要な興奮性神経伝達物質であり,記憶・学習などの脳高次機能に重要な役割を果たしている。しかし,その機能的な重要性の反面,過剰なグルタミン酸はグルタミン酸受容体の過剰な活性化により,神経細胞の傷害作用を持つ。これは様々な神経変性疾患に伴う神経細胞死の原因と考えられ,また近年では精神疾患への関与も明らかになりつつある。このため神経活動に伴ってプレシナプスから放出されたグルタミン酸は,グルタミン酸受容体に結合した後,アストロサイトおよびポストシナプスの細胞膜上のグルタミン酸トランスポーターにより迅速に細胞内に取り込まれ,細胞外濃度は低く保たれている。現在,哺乳類の中枢神経系にはGLAST(EAAT1),GLT1(EAAT2),EAAC1(EAAT3),EAAT4,EAAT5の5種類のグルタミン酸トランスポーターが知られる。GLAST,GLT1はアストロサイトに,EAAC1,EAAT4は神経細胞に,EAAT5は網膜に存在する。近年,グルタミン酸トランスポーター欠損マウスの解析,様々な精神神経疾患のゲノム解析から,グルタミン酸トランスポーターによる神経伝達制御の重要性と,その機能不全としての精神神経疾患が明らかになりつつある。
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