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レトロエレメント(レトロトランスポゾン)は,様々な生物種のゲノムDNAに組み込まれて存在している「動く(転移する)」遺伝子配列である。個体間で感染する外来性レトロウイルスが宿主の遺伝子に組み込まれた場合にも,その遺伝子はレトロエレメントではあるが,通常は内在性のレトロトランスポゾンをさす。レトロトランスポゾンは,自らがコードする逆転写酵素の働きにより自身のコピーを作り,ゲノム内に挿入されてゲノムDNAを変化させる。よって,レトロトランスポゾンの活性化は多様性や突然変異を生み出す原動力となる。実際,神経前駆細胞において,レトロトランスポゾンの転移により遺伝子発現の違い,すなわち細胞の多様性を生み出していることが報告されている1)。一方,このゲノムDNAの変化が生殖細胞で生じ次世代に伝わることにより,レトロトランスポゾンは進化に大きな役割を果たしてきたと考えられている。しかし,通常の配偶子形成においては,過度の活性化は種の保存にとって脅威となる。したがって,生殖細胞におけるレトロトランスポゾンの制御は,体細胞よりもはるかに厳密でなければならない。
雄の生殖細胞形成過程においては,生殖細胞特異的に発現しているpiRNA(Piwi interacting RNA)とそれに結合するPIWIファミリータンパク質が,レトロトランスポゾンの抑制に重要な役割を果たしていることが明らかとなってきた2-5)。また,雌の卵形成過程においては,piRNAに加え内在性のsiRNA(endo-siRNA;endogenous small interfering RNA)が発現し,レトロトランスポゾンの抑制に関与していることが明らかとなっている6,7)。本稿では,マウスの精子形成過程におけるpiRNAとPIWIファミリーを介したレトロトランスポゾンの抑制機構,および,卵形成過程におけるpiRNAとendo-siRNAについて紹介したい。
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