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RothmanらによるSNARE仮説1)は,小胞膜にある蛋白質(v-SNARE)と輸送先の膜にある蛋白質(t-SNARE)との相互作用により,二つの膜が融合するという明解かつシンプルなもので,実際に多くの細胞内膜融合の基礎となることが明らかになってきた。v-SNAREとt-SNAREの組合せによって,輸送されるものとその輸送先が特異的に決まり,かつ,SNARE複合体がターゲット膜との膜融合に必要なミニマムコンポーネントであるということはSNARE仮説の根幹であるが,そのことを証明するのにSNARE蛋白質を組み込んだリポソームを用いた膜融合実験は大きな貢献をしたといえる。
v-SNAREであるVAMP2とt-SNAREであるSNAP25とsyntaxin1の三つの蛋白質だけで,リポソームの膜融合が起こることがはじめて示されたのは1998年である2)。リポソームを用いた膜融合活性の測定は古くからいろいろな方法で行われているが,Rothmanらは,蛍光共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer:FRET)という現象を利用した方法3)を用いて,SNARE蛋白質を組み込んだリポソームの融合に伴うlipid mixingを測定した。リポソームにSNARE蛋白質を組み込んだモデル系は,その構成要素や実験条件を厳密にコントロールできるという点ですぐれた実験系であるが,当然実在の細胞系とは異なるので,得られた結果の解釈には注意しなくてはならない。細胞系とリポソーム系は互いに補完しあって,真実に近づいていくと考えるべきであり,後述するように実際そのようになっている。
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