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1 甲状腺癌の診断における問題点
甲状腺癌は組織学的に濾胞細胞由来の乳頭癌,濾胞癌,低分化癌,未分化癌と傍濾胞細胞由来の髄様癌とその他の癌(悪性リンパ腫など)に分類される。乳頭癌と濾胞癌は分化癌と称され,全甲状腺癌に占める割合はそれぞれおよそ8割と1割である。低分化癌と未分化癌は乳頭癌と濾胞癌(分化癌)を発生母地として発生する。髄様癌は遺伝性のものと散発性のものに分類されるが,遺伝性の髄様癌に副腎褐色細胞腫などを合併する多発性内分泌腫瘍症2型(MEN type 2)の一部を構成する場合がある。これら甲状腺癌は内分泌系悪性腫瘍のうち最多のものであり,全悪性腫瘍のうち米国で2.5%,日本で1.3%を占めるが,全癌死に占める割合は米国で0.28%,日本で0.5%しかない1,2)。これは甲状腺癌が予後良好であることによると思われる。分化癌である乳頭癌と濾胞癌の10年生存率はそれぞれ93%と85%とされている3)。
甲状腺腫瘍における最も有用な診断法は穿刺吸引細胞診(FNAC)であり,乳頭癌,未分化癌,髄様癌では高い正診率が得られているためその診断は比較的容易である。しかし,濾胞癌と濾胞腺腫の診断は脈管侵襲あるいは被膜浸潤の有無によって規定されるため,転移巣が存在しない場合にはFNACでは診断できない。このため濾胞性結節性病変は良悪性の術前鑑別診断なしに手術されるが,濾胞癌と判明するのはそのうちの10-15%程度しかなく4,5),多くの不必要な手術が行われているのが現状である。また,FNACで乳頭癌が偽陰性とされることも少なくない5)。さらに,濾胞癌は微小浸潤型と広範浸潤型に分類されるが,微小浸潤型濾胞癌に関しては診断再現性が低く,いわゆるobserver variationが存在する6)。Observer variationは乳頭癌のバリアントである濾胞型乳頭癌の診断においても問題となっている7)。
これらの問題を解決しうる診断手法の確立が待望されており,ガレクチン-3をターゲットとした手法が注目されてきた。本稿では,甲状腺癌においてこれまでに得られたガレクチン-3に関する知見と今後の展望について述べる。
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