Japanese
English
特集 樹状突起
マウス遺伝学による神経回路網精緻化の研究
Studies of neural circuit refinement by mouse genetics
岩里 琢治
1
,
糸原 重美
1
Takuji Iwasato
1
,
Shigeyoshi Itohara
1
1理化学研究所脳科学総合研究センター行動遺伝学技術開発チーム
pp.138-145
発行日 2003年4月15日
Published Date 2003/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100737
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
発達期の脳において,遺伝的プログラムに従って,細胞移動や軸索誘導が起こり,おおまかな神経回路が形作られる。高等動物の神経回路が機能的なものとして完成するためには,それに加えて,発達期のある特定の期間に,神経活動によって回路が精緻化されることが必要と考えられている。こうした神経活動依存的な回路発達の機構は,これまで哺乳類をはじめとする脊椎動物の感覚系を有力なモデルとして研究されてきた。最もよく用いられてきたのは,ネコやフェレットなど大型動物の視覚系であり,手法としては主に薬理学が用いられた。マウスやラットの体性感覚系にある,バレル(barrel)と呼ばれる特徴的な神経構造の形成もまた,優れたモデル系として注目されてきた1)。しかし,動物が小さいためか,従来の薬理学的手法が有効に適用できず2,3),そのため分子機構の研究はほとんど進んでいなかった。近年,マウス遺伝学的手法が導入されることによって,ようやく齧歯類に特有のバレル形成に関する分子機構を解明する試みが端緒についた。本稿では,樹状突起発達に関する最近の知見を含め,バレル形成機構についての遺伝学的研究を概説する。
Copyright © 2003, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.