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中心体(centrosome)は直交する1対の中心小体(centriole)とその周囲を取り巻く蛋白質(pericentrial material)で形成されており,細胞周期を通じて様々な細胞現象に関与していることが知られている1,2)。特に有糸分裂の際には紡錘体極(spindle pole)となり,2極性の確立,紡錘体糸の形成,赤道面の決定に重要な働きを持つ。これらはすべて染色体の均等な分配に必要不可欠である1,2)。それぞれの娘細胞は親細胞から一つの中心体しか受け取らないため,中心体は間期中(有糸分裂前)に複製されなければならない。動物体細胞では,中心体の複製は細胞周期のG1/S転移期に中心小体の分離,複製によって始まる。中心小体ならびに中心体の複製はG2期までに完了し,またこの複製は1細胞周期中一度だけでなければならない(複数回の複製は3極以上の異常分裂の原因となり,発癌に重要な染色体異数性を引き起こす)ため,中心体の複製はDNA複製周期などその他の細胞周期と同調して起こる必要がある(図1)。
有糸分裂を促すシグナルは,多くの細胞質および核内分子を介して伝達される。なかでも,CDKs(cyclin-dependent kinases)として知られるセリン/スレオニンキナーゼのファミリーは,DNA合成や有糸分裂といった主な細胞周期イベントの発現を調節している3-5)。また,CDKの活性は細胞周期特異的に発現するサイクリンによって制御されている3-5)(図1)。G1期サイクリンであるサイクリンEは,CDK2と二量体を形成して,セリン/スレオニンキナーゼ活性を発現し,RBをはじめとする細胞周期調節に重要な分子のリン酸化に関与する。サイクリンEの発現はG1後期に最大となり,その活性はS期への移行(DNA複製開始)に必須である6,7)。中心体複製とDNA複製が同一の経路で賄われているのか,もしくはいくつかの共通イベントをもつ二つの経路が存在するのかなど不明な点が多かったが,近年,CDK2/サイクリンE複合体が中心体複製開始の制御を行っていることが相次いで報告され,中心体複製の研究に新たな展開をもたらした8-10)。
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