特集 現代医学・生物学の仮説・学説2008
1.細胞生物学
骨細胞のメカノセンサー機能
池田 恭治
1
Kyoji Ikeda
1
1国立長寿医療センター研究所運動器疾患研究部
pp.364-365
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100516
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骨は支持・運動,カルシウム代謝調節,造血などの機能を果たす,複雑に進化した構造体である。骨代謝は破骨細胞(osteoclast)による骨吸収と骨芽細胞(osteoblast)による骨形成によって成り立ち(図),骨の量と質を保ちながら,必要に応じてカルシウムを血液に供給する役目を果たしている。また最近は,骨芽細胞が造血幹細胞のニッチとして働くとの説も提唱されている1)。
骨代謝を調節する主なメカニズムとして,1)副甲状腺ホルモン(PTH)や活性型ビタミンDなどのカルシウム調節ホルモンに加えて,エストロゲンやアンドロゲンなどの性ホルモンによる内分泌性の調節,2)視床下部から交感神経系を経由して骨芽細胞に至る神経系の調節,3)T細胞や,骨局所で産生されるTNF-αやIL-1などのサイトカインを介する免疫・炎症性の調節,4)機械(力学)刺激による調節が働いている。なかでもメカニカルな調節は骨に特徴的であり,宇宙の微小重力環境での生活や,地上でも寝たきりなどの非荷重状態が急激な骨量の減少,すなわち骨粗鬆症をもたらすことはよく知られている。一方で,重力による植物成長の調節や血流による血管機能の調節と比べて,骨におけるメカノ調節のメカニズムは解明が遅れている。
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