特集 現代医学・生物学の仮説・学説2008
1.細胞生物学
細胞間接着装置タイトジャンクションと上皮透過性
岩本 典子
1
,
古瀬 幹夫
1
Noriko Iwamoto
1
,
Mikio Furuse
1
1神戸大学大学院医学系研究科細胞生物学分野
pp.336-337
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100502
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●タイトジャンクションの構造
多細胞動物にとって上皮の持つバリア機能は,生体の恒常性を維持するために極めて重要な働きを担っている。上皮細胞は極性を持ち,細胞同士の接着によって二次元,三次元の構造をなしている。タイトジャンクション(tight junction;TJ)は上皮細胞のもつ細胞間接着複合体のうち最も頂端部にある上皮間接着構造である。電子顕微鏡の観察ではTJは隣り合った細胞間の距離が0まで近づいていることから,上皮間接着を強固に保ち,バリアとして機能して頂端部と側底部のコンパートメントの維持を行っていると考えられてきた。TJに局在する分子としてclaudin,occludin,tricellulinなど複数の膜貫通タンパク質があるが,現在ではTJ strandの主要な構成成分はclaudinであることが明らかになっている。claudinは~23kDaの4回膜貫通タンパク質で遺伝子ファミリーを形成しており,現在少なくとも24種知られている。また,脊椎動物のTJに対応するものとして無脊椎動物のseptate junctionがあり,その構成成分のいくつかはclaudin-likeな分子であることから,細胞間のバリア機能を担う分子としてclaudinが進化的に保存されていることが示唆される。
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