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分子量20kDaの平滑筋ミオシン軽鎖(MLC)の可逆的リン酸化反応は,血管平滑筋収縮制御において中心的な役割を果たす1)。MLCのリン酸化反応はCa2+依存性の過程であり,細胞内Ca2+シグナルの制御下にある。ところが,細胞質Ca2+濃度と発生張力の関係を解析すると,同じ程度のCa2+濃度変化に対して得られる収縮の程度は,用いた収縮刺激の種類によって異なる2)。例えば,細胞膜受容体を介する収縮刺激は,細胞膜脱分極刺激と比べて,同じCa2+濃度上昇の場合,より大きな収縮を引き起こすことが知られている2)。この現象を,平滑筋収縮装置のCa2+感受性亢進と呼ぶ3,4)。従って,血管平滑筋の収縮は,Ca2+シグナルのみならず,収縮装置のCa2+感受性変化によっても調節されることになる。このCa2+感受性調節において,MLCリン酸化レベルの調節が重要な役割を果たしていると考えられている3)。
MLCリン酸化レベルは,リン酸化反応と脱リン酸化のバランスによって決定される5)。Ca2+非依存性にリン酸化反応が亢進する場合,あるいは,脱リン酸化反応が阻害される場合に,同じCa2+濃度に対して得られるMLCのリン酸化が増加するため,収縮装置のCa2+感受性は亢進することになる。MLCをリン酸化し,ミオシンを活性化するリン酸化酵素としては,1970年代後半に同定されたCa2+-カルモジュリン依存性MLCキナーゼ(MLCK)が長い間唯一の酵素であったが,最近10年余りの研究によって,Ca2+非依存性にMLCをリン酸化し,ミオシンを活性化する新たなリン酸化酵素群が見出された。この発見と並行して,ミオシン脱リン酸化酵素の研究も大いに進み,脱リン酸化反応の調節機構も明らかになっている。これらの新たな知見により,Ca2+感受性調節機構の生化学的基盤の詳細が明らかにされつつある3,5)。
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