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細胞接着は,生体を構築・維持していくために不可欠な細胞の機能であり,多細胞生物の個体発生における組織・器官の形成などの生命現象や炎症,創傷治癒,癌細胞の浸潤・転移といった病態を理解するためにも極めて重要である。細胞接着には,細胞表面の接着分子が細胞外基質と結合する細胞-細胞外基質間接着と,隣り合う細胞の接着分子がトランスに結合する細胞-細胞間接着がある。線維芽細胞や血球細胞は細胞運動を支える一過性の動的な接着を形成するが,上皮細胞や内皮細胞は生体の恒常性維持に必須の安定した接着を形成する。運動している線維芽細胞は,進行方向に向かって細胞突起を伸ばし,その先進部において接着分子インテグリンを介して細胞-細胞外基質間接着装置である接着斑(focal adhesion, FA)を形成するとともに,後方部においてFAを分解することによって,細胞体を進行方向へ移動させるという過程を繰り返している。このような細胞運動におけるFAの動的な再編成には,インテグリンが細胞膜とエンドソームの間をリサイクリングされることが種々の生理的および病理的現象において重要な役割を担っている1)。一方,接着している上皮細胞は,二つの生体腔を隔てる安定したバリアーを形成している。このバリアーを支える上皮細胞接着は,隣り合う細胞間隙をシールする安定した構造であるとともに,一過性かつ動的に再編成される構造でもある。SnailやTwistといった転写因子やユビキチン-プロテアソーム系は,接着分子の発現量を調節することによって,上皮細胞接着の再編成に重要な役割を担っているが,最近,上皮細胞接着を担っている接着分子も細胞膜とエンドソームの間をリサイクリングしていることが明らかになりつつある2)。本稿では,この接着分子のリサイクリングについて考えてみたい。
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