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アクチンフィラメントと細胞膜タンパク質との相互作用は動的に制御されているが,種々の細胞膜ドメインに対応した多様な細胞膜裏打ちタンパク質が,アクチンフィラメントと細胞膜タンパク質のインターフェースとして機能する。ERM(Ezrin/Radixin/Moesin)タンパク質は,アクチンフィラメントと細胞膜タンパク質を架橋するリンカータンパク質として機能することにより,細胞アピカル膜を構造的・機能的に構築する。ERMタンパク質については,その分子内でのドメイン間相互作用およびほかのタンパク質との分子間相互作用が,生化学・分子生物学的解析やX線構造解析を含めた分子レベル,細胞レベル,個体レベルでよく検討されている。本小稿では,われわれの研究室で得られた結果をまじえつつ,これまでに得られた所見を以下に概説したい。様々な生体システムでの解析の詳細は文献を参照されたい。
われわれは,肝細胞の毛細胆管アピカル膜より1989年にRadixinを同定した。その後のcDNA配列の解析を行った際,RadixinがBretscherやFurthmayrの研究室で各々解析されていたEzrinやMoesinとファミリーを形成することを見出し, ERMファミリーという名称を提唱し,今日広く受け入れられている1-4)。ERMタンパク質は,そのN末で直接的あるいは間接的に細胞膜に結合し, C末でアクチンフィラメントに結合する。このようなリンカータンパク質としての活性は低分子量GTP結合タンパク質Rhoの制御を受け,活性型のopen型とN末とC末の結合した不活性型のclosed型の二つの型を取る。Rhoの活性化に伴い,細胞膜の近傍で活性化されたPI4P5KはPIPをリン酸化しPIP2とする。ERMタンパク質はFERMドメインでPIP2に結合するが,PIP2に結合したERMタンパク質はN末とC末間の分子内結合を阻害され,さらにRhoの下流にあるキナーゼによりC末側のERMに保存するスレオニン残基がリン酸化されることで,open型活性化状態が維持される。活性型ERMタンパク質のFERMドメインにはRhoGDIが結合し,RhoGDPの遊離とRhoGTPの産生を促し,ポジティブフィードバック回路を形成する。
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