特集 おなかの病気を診る〜機能性消化器疾患への誘い—つらいおなかの痛み、張り、下痢、便秘への処方箋
【機能性疾患のtips and pearls〜画像では明らかな異常がないが日常生活に支障をきたす疾患】
❻脾彎曲部症候群
松田 正
1
1みさとファミリークリニック
キーワード:
脾彎曲部症候群
,
柴胡疎肝湯
,
漢方薬
,
即効性
Keyword:
脾彎曲部症候群
,
柴胡疎肝湯
,
漢方薬
,
即効性
pp.782-784
発行日 2025年7月15日
Published Date 2025/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218880510350070782
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CASE
患者:40代、男性。
主訴:左季肋部痛、背部痛
既往歴・家族歴:特記すべきことなし
現病歴:生来健康で病院を受診することはほとんどなかった。1年ほど前から、左季肋部から背部にかけての痛みが断続的に起きるため、その都度医療機関を受診するも異常なしの診断を受け、自然軽快を繰り返していた。1カ月前に痛みが激しくなり大学病院を受診。採血・採尿、腹部超音波、腹部造影CT、腹部MRI&MRCP(MR胆管膵管撮影)、上部および下部消化管内視鏡検査を受けるも異常は認めず、「検査で異常がないので治療法はありません」と言われ、途方に暮れて当院を受診。
問診所見:腹痛は持続痛で間欠的ではない。食事による影響もない。排便は良好で通常便。
診察所見:腹部に圧痛はなくデファンス(筋性防御)もなし。腸管雑音も正常範囲内。左季肋部に打診上鼓音を認める。
診断および治療:経過と診察所見から、脾彎曲部症候群を疑い、柴胡疎肝湯を処方。柴胡疎肝湯は単剤のエキス剤もあるが、四逆散2.5gと香蘇散2.5gを合方(漢方薬を組み合わせて用いる方法)することで、柴胡疎肝湯として1日3回毎食後内服とした。
治療後経過:内服開始2日目で症状は軽快傾向となり、1週間後には症状が完全に消失したため、いったん内服を廃薬(内服を中止すること)としたが、その後、3カ月間は症状再発を認めなかった。4カ月後に軽度の症状が再発し再診。左季肋部や背部に軽い違和感(鈍い痛み、張り感など)を感じた時に、柴胡疎肝湯を頓用で内服させ、症状が続く時には数日間内服させる方法を用いることで、徐々に痛みの頻度が減っていき、1年後には完治した。

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