Editorial
視えない“異常”にどう向き合うか
中野 弘康
1
1竹山病院 内科
pp.731
発行日 2025年7月15日
Published Date 2025/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218880510350070731
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外来をしていると、腹痛、腹部膨満、下痢、便秘……など、お腹の愁訴で受診する患者さんがとても多いことに気がつきます。多くは、バイタルサインに異常を認めることもなく、困っている症状も昨日とか一昨日とか、ではなく、数週間前から〜とか、数カ月前から〜とか、場合によっては、(痛みが)急に良くなったり、出てきたり……と、慢性・再発性の経過をとることが多い印象です。そのような患者さんとどう向き合っていけばよいのでしょう。担当医は「まずは器質的疾患を否定しよう」と意気込んで、血液検査、腹部超音波検査、上・下部消化管内視鏡、腹部CT、MRI……などといろいろ検査を行うのですが、“特に目立った異常がない”となると、急に意気消沈してしまい、「検査しましたが、異常ありませんでした」「私の担当科の病気ではないので、心療内科を受診してください」などと言って、患者さんを放してしまいがちではないでしょうか?
検査で明らかな異常がキャッチできないとどうしてもそのような言動に至ってしまいがちですが、患者さんの立場からすると、「別に鬱々とした気分でもなく、不安もないのに、なぜ心療内科に受診しなくてはならないのだろう?」と思われるようです。医療者不信にもつながるかもしれません。さあ、このような患者さんにどう向き合ったらよいのでしょうか?

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