特集 シマから学ぶ、プライマリ・ケアの未来—いざ、素晴らしき離島医療の世界へ
【離島医療を支える新しい形】
【コラム❶】医師がいない離島で働く看護師—情報通信技術を用いた死亡診断から考える離島医療の本質
杉山 賢明
1,2
1一般社団法人みんなの健康らぼ
2医療法人陽気会 網小医院
pp.663-664
発行日 2025年6月15日
Published Date 2025/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218880510350060663
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筆者は、診療時間外に医師が不在となる有人離島において、生前に診察を行った医師として、全国で初めてガイドライン1)に基づいた情報通信技術(ICT)を活用した死亡診断(以下、本技術)を実施した。本技術は、看護師の働きなくしては実現しえない。本コラムでは、医師を補助した看護師から聴取した意見をもとに、本技術において看護師に求められる要件と看護師にとっての意義、および本技術の限界について考察し、離島やへき地医療の本質を探る。なお、本技術の詳細については、『Internal Medicine』誌のCase Report2)やYouTube解説3)に記載しているため、ここでは割愛する。
看護師に求められる第一の要件は、事前に法医学に関する教育研修を修了していることである1)。第二の要件は、医師による患者の身体観察を適切に補助できることである。これらの看護師の働きにより、死亡時に医師が遠方にいて対面での死後診察が困難な場合でも、円滑な死亡診断書の交付と埋火葬1)につながる。また、住み慣れた場所を離れて医療施設に入院したり、死亡後に遺体を長時間保存・長距離搬送したりする機会が減少し1)、本人や家族は精神的な安らぎを得ることができる。このような地域包括ケアやグリーフケアにつながる実践の機会は、離島やへき地で働く看護師にこそ与えられていると言える。
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