書評
「下畑享良 神経症候学note—〈興味を持った「脳神経内科」論文〉のエッセンス」—下畑享良【著】
杉田 陽一郎
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1東京ベイ・浦安市川医療センター神経内科
pp.921
発行日 2026年8月1日
Published Date 2026/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.188160960780080921
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近年,画像検査や遺伝子検査をはじめとした検査技術の進歩は著しい。その一方で,ベッドサイドでの病歴聴取や神経診察が時にないがしろにされてしまう状況をしばしば目にする。しかし,検査主体の診療では,自己抗体の偽陽性や画像の無症候性病変に翻弄されてしまう危険性がある。神経診療の中核は“病歴”と“神経診察”であることはいかなる時代になっても変わらないだろう。その中でも神経症候は,丁寧な観察と深い洞察に基づいた臨床医の「知の結晶」である。本書は,こうした神経症候の歴史的背景,病態生理,そして臨床的な意義を,下畑享良先生が長年にわたり培われた膨大なご見識を基に余すところなく伝えてくれる書籍である。
神経症候学というと古典的と思われるかもしれないが,決してそうではない。例えば本書で紹介されている,マスク装着により下方の視覚情報が制限され,深部感覚失調による歩行障害が悪化する“face mask sign”は,2020年に報告された神経所見である。このように,神経症候は決して過去の遺物ではなく,日々の臨床における観察に基づき,新しい気付きが生まれ続けている分野であることも改めて学ぶことができる。

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