連載 原著・過去の論文から学ぶ・15
レム睡眠行動異常症をめぐる原著に隠された研究者たちの奮闘の歴史
平田 幸一
1
1獨協医科大学
pp.832-835
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.188160960770070832
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原著との出会い
Schenck CH, Bundlie SR, Ettinger MG, Mahowald MW: Chronic behavioral disorders of human REM sleep: a new category of parasomnia. Sleep 9: 293-308, 1986
1980年代の後半,海外留学から帰国直後の外来診察で,3つの大学病院でも診断がつかないという患者さんに出会った。その患者さんの訴えは当時の自分には本当に不思議な訴えで,寝ている間に夫が自分を殴ったりするのだが,これは夫の病気なのか,自分の幻覚なのかという訴えであった。自分の診断ではその患者さんの夫が夜間てんかんではないのかと思っていた。2回ほど自分のもとを訪れられたが,確たる答えができないまま,来院されなくなってしまった。
後になってSchenck先生(Fig. 1)のこの論文1)をしっかり読んでいれば,自信をもって診断につながる回答ができたのにという悔しい思いをし,当時この原著を初めて読んだ。その後,このレム睡眠行動障害(rapid eye movement sleep behavior disorder:RBD)がシヌクレイノパチーであり,レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)やパーキンソン病(Parkinson disease:PD)などの変性疾患の前駆症状の1つであることが,疑いのない事実であることが判明し,あらためて原著に立ち戻り精読する気持ちが沸いた。

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