巻頭言
学ぶこと,学んだこと,学び続けること
城戸 顕
1
1奈良県立医科大学リハビリテーション医学講座
pp.231
発行日 2024年4月18日
Published Date 2024/4/18
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- 文献概要
1995年の春から3年半,大学院生として腫瘍病理学教室で基礎研究に従事しました.この教室は発がん過程に取り組む実験病理学の教室で,転移メカニズムの解明をめざす私はやや異端的存在でしたが,当時若手を中心に盛り上がり始めた分子生物学の波に乗り,潤沢な研究資金と恵まれた環境でさまざまな動物モデルを用いて研究生活を送らせていただきました.今は亡き小西陽一教授の豪快な指導のもと,Gilsonのマイクロピペットを相棒に,科学の探究者(気取り)で過ごした楽しい日々でした.まだ蛍光ラベリング法はなかった時代,P-32のRadio-labeledでNorthernもSouthernもPCR-SSCP法もすべてPolyacrylamide gelの作成から手作業でした.自分で切り出したゲルから,これも手作業でdirect sequencingを行い,教室で樹立した動物モデルのp53のpoint mutationを発見したときは天にも昇る気持ちでした.
博士課程の早期修了を許された私は,1998年の10月にフンボルト財団フェローとしてドイツに渡りました.物静かなAlbert Roessner教授の指導を受けたMagdeburg大学の病理学教室では,ヒト骨肉腫細胞の不死化過程と肺転移メカニズムの解明の他,基礎疾患に囚われずリウマチや骨関節症の関節破壊メカニズムも,大きく普遍的な「運動器の障害」として考える(そしてがん研究のmethodologyを応用する)よう示唆をいただき,いくつかの研究成果をまとめることができました.このRoessner教授のくださった示唆は,今日に至る私の診療・研究に生き続けることになります.
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