書論
書くことは生きること
豊原 響子
1
1島根大学人間科学部 人間科学科心理学コース
pp.508-512
発行日 2024年11月15日
Published Date 2024/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689201348
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本書は文字通り生きるか死ぬかのところで書き始められた一冊である。だからこそ、読むには相応の覚悟がいる。それはひとりの人間の人生を受け止める覚悟とも言えるだろう。誰かのことばと正面から向き合うとき、私たちはそのことばにふれる以前の“わたし”にはもう戻れない。人知れずかかえられてきた体験や感情の一端を知ったとき、こちらも何か感じ考えずにはいられない。誰かと本当に出会うとは、きっとそういうことだ。
何か大きな出来事を体験したとき、私たちはそれ以前の“わたし”に完全に戻ることはできない。過去と現在のつながりが断たれ、“わたし”がバラバラになったような気がするとき、それでも生きるとはどういうことなのか。
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