特集 トラウマからの回復には“身体・感覚”へのアプローチ
トラウマセラピーの歴史と心身の考え方の必然的“統合”
金井 講治
1
1大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター
pp.388-393
発行日 2024年9月15日
Published Date 2024/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689201321
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深く話しても、楽にならない!?
「トラウマセラピー」と聞いて、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。多くの人は、カウンセリングでトラウマ体験を言語化し、それを専門家と共有することで治療を進めていく、といったイメージを持つのではないでしょうか。実際、こうしたトークセラピーといわれる言語的アプローチは、フロイト以来の伝統であり、長く主流であり続けてきました。
ところが近年、トラウマ臨床の現場から、こうした言語的アプローチの限界を指摘する声が上がっています。「トラウマは深く話しても、楽にならないし、解決もしない」*1「トラウマを中核に持つ患者の場合、共感と傾聴の原則に沿った精神療法を行うと悪化が生じる」*2といった見解です。トラウマに蓋をしてきた人にとって、語ることはかえって症状を悪化させるリスクすらあると聞くと、みなさんは驚かれるのではないでしょうか。
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