連載 統合失調症とやわらかい回復・2
回復は予期せず訪れる。ベースチェンジ!
仲地 宗幸
1
1就労移行・生活訓練事業所GoRiLla
pp.88-91
発行日 2023年1月15日
Published Date 2023/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689201096
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回復って何だろう
統合失調症の当事者で友人であるたけちゃん(男性)と一緒に、大学の講義に出かけた時のことである。何を話せばいいの?と尋ねるたけちゃんに「自己紹介でしょ、私との関係でしょ、あと統合失調症の回復についてっていうのはどう?」と返す。彼は黙って目を閉じ、上を向いてしばらく考えていた。そして目を開き「回復って、あんまり良く言いすぎると、後で自分が後悔しそう」と言った。その気持ちはよく理解できた。講義だからといって、病を克服したような、自分で努力して乗り越えたようなカッコイイことを言ってしまうと、後でブーメランのように自分に返ってきてダメージを受けるという意味だろう。
「そうだね。たけちゃんは回復ってどういうことを言うと思うの?」と質問してみた。彼はまた静かに考え、首をかしげながら答えた。「いろんなことを学びながら、自分として在るということかな」。この言葉も私にはしっくりきた。統合失調症の回復とは、自分としての在りようを取り戻したり獲得したりすることで、自分として人と共にいる在り方そのもののことを指すのだろう。以来、「統合失調症の回復」と言えば、私はこの定義を拝借させてもらっている。
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