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ビタミンB6(ヘキゼルミン)に依る皮膚疾患の治驗に就て
飯田 康衛
1
,
川田 誠一
1
,
小川 坦二
1
1日本醫科大學皮膚科教室
pp.121-124
発行日 1948年8月1日
Published Date 1948/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200098
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緒言
1925年ゴールドベルガーがRattenpellagraを記載せる當時はこれと人間のペラグラとは同一の疾患と考へられてゐた。1934年P.Györgyは研究の結果Rattenpellagraが人間のペラグラとは全く別個のビタミン缺乏症であることを證明し、これを治癒せしむる因子をビタミンB6と命名した。次いで1933年Kerestesy, György, Lepkovsky等は相次いでビタミンB6鹽酸鹽の分離抽出に成功し、市場・道、Kuhn, Wendt等も夫々異つた方法に依つてこれを分離した。このビタミンB6が如何なる生理的機能を有するかは、ビタミンB群缺乏飼料で飼育せるRatteにビタミンB1とラクトフラビンとを充分に補給せるときに出現する缺乏症状(Rattenpellagra)を觀察することによつて種々論議されてゐるが、その主要なる作用は蛋白質の中間代謝物たるCystin HOOC(NH2)、CH-CH2-S-S-CH2・CH(NH2)の代謝に關與することであるといはれてゐる。表皮、爪、毛髮の主成分であるKeratin中には多量のCystinが含有せられてゐるから、ビタミンB6缺乏によるCystinの代謝障害は必然的に上皮細胞の病變を招き種々なる皮膚疾患を誘起するものと考へられる。
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