巻頭
ある日の空
安部 俊太郎
pp.1-8
発行日 2011年7月15日
Published Date 2011/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100881
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軍手とカメラを自転車に乗せて、仙台市内から沿岸部へと走りました。軍手は力仕事をするために用意しましたが、カメラのほうはというと、本音では、使うことがなければいいなと思っていました。ありのままを記録し続けるには、強くなくてはなりません。
実際に見ると、あれは瓦礫とは違うと感じました。なんといえばいいのでしょうか。海水でひっくり返された惨状を目の当たりにしても不思議と感情に変化は起こりませんでしたが、万物は流転するなんていうことが一時的に信じられなくなりました。あまりにも潰れすぎていたからです。そんな謂われや教えが頭に浮かんで、思わず、ウソばっかりじゃん、と口にしたのを覚えています。
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