連載 宮子あずさのサイキア=トリップ・44
体験的・膝打ちギョームカイゼン
宮子 あずさ
1
1東京厚生年金病院
pp.104-105
発行日 2005年3月1日
Published Date 2005/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100087
- 有料閲覧
- 文献概要
まるで雑然とした玄関口のよう
今、うちの精神科病棟はいささか荒れています。とにかく入退院が激しく、入院の受け入れにてんてこ舞い。言い方は悪いのですが、患者さんの出入りを裁くのが、日々の大仕事です。
空床がなく、退院のあとにすぐ入院を受けるので、患者さんには早くベッドを空けてもらわなければなりません。が、急ぐときに限って、患者さんの訴えの細かいことといったら……。
「頓服の薬が残り少ないから、安心して帰れない」「便の出が悪いから、アローゼンをプルセニドに代えてください。でも、やっぱり慣れたアローゼンを増やしたほうがいいかしら。先生と面談させてください」「風邪気味だから、風邪薬を出してください。あ、やっぱり内科にかかってから帰ります」「入院していたついでに、1年前にやった胃カメラの結果を聞いてから帰りたい」「差し歯が取れた」「隣の患者さんが私の空いたあとの窓際に移りたいと言っているので、よろしくお願いします」「便が出そうで帰れない」「死にたい気持ちが取れません」エトセトラエトセトラ。
何でこんなときに限ってこんなことが? と思うようなことが起こり、「今じゃなきゃだめ?」みたいな訴えがそこにからみついて、滞るときは徹底的に滞るのです。かくしてナースステーションの中は、退院患者さんが群れ集い、そこに入院予定の患者さんが上がってきて……。病棟はさながら、出入りの激しい宿屋の玄関口のごとし、です。
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.