特集1 看護がはじめる「認知療法」 幻聴・妄想への新しいアプローチ
当事者は待ち望んでいます。重荷が軽くなるきっかけを。
高森 信子
pp.42-49
発行日 2006年3月1日
Published Date 2006/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100062
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1 「先生には話しにくい」の理由
ある地方で、SSTのセッションを行なっていたときのことです。1人の青年から相談を受けました。午後のセッションがはじまる前の短い時間でした。その青年をAさんとしましょう。Aさんは、見たところ30代前半でしょうか。奥さんと小学1年生の息子さんがいました。
Aさんは、「自分の脳に機械が埋め込まれている。その手術をしたのは強制入院させられたときの院長先生で、以来、自分は他から操作される人間となり、やりたいことが何もできなくなった。この苦しみを妻だけはわかってくれるけれど、他は誰も理解してくれないし、私の話を信じてくれない。今の主治医は院長先生の子分に違いないので、このことを言ったら〈即入院!〉と言うに決まっているので、この苦しみは言えない。人は信じてくれないけど、事実私の頭には機械が入っている。だからそれを証明するために、MRIで検査してほしい。検査で結果が出れば皆も私の苦しみがわかってくれるはず。一緒に暮らしている父も院長とグルで、私がこの話をすると〈妄想を言うな!〉ってどなる。私の苦しみがわかってもらえなくてとても口惜しい」と涙で顔をくしゃくしゃにして訴えるのです。
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.