特集 訪問看護と倫理
訪問看護の倫理を組織的に実行するには
川村 佐和子
1
1東京都立保健科学大学看護学科
pp.596-599
発行日 1999年8月15日
Published Date 1999/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688902489
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職業倫理とは
人々が活動する際に,その活動が他者へ及ぼす影響についての基本的な考え方を社会的に共有している必要がある.つまり,他者の人権を侵してはいけない,他者が所有する物品を盗んではいけない,他者を殺傷してはいけないなどの考え方である.人権の保障は我が国の憲法で定められている.盗みや殺傷の道徳的悪はきわめて普遍的な考え方,日常的な常識(モラル)として基礎教育されている.他者の物品を盗んだ場合や殺傷した場合には,これらを行なった人々は法律(刑法)によって罰せられる.
医療という行為を考えてみると,例えば手術は人為的な傷害行為となり得る.薬を投与する際には,その分量が不適切であれば,人体に悪影響を与える行為となる.医療者もこれを受ける側も,前提として健康回復の成果があるということの期待をもって行なわれるものである.しかし,この期待が破れた時,手術や投薬は殺傷行為に変化してしまうことさえある.
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