コラム 私のこだわり
ひらめきと実行力
秋山 英雄
1
1群馬大学
pp.207
発行日 2008年10月30日
Published Date 2008/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102487
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偉大な諸先輩に混ざって私のこだわりなるものを述べるのは大変恐縮ですが,大学院生時代の思い出を書かせていただきます。基礎研究と臨床を結びつけて診療を行うことは簡単のようで大変な作業です。大学院生時代,血管の分子生物学,特に転写を中心に研究している内科の研究室に在籍して得られた教訓です。臨床と基礎の分野で既知の事実をまるでパズルを組み合わせるようにして,病態の仮説を作り上げていきます。臨床の先生にいかに興味をもってもらうかが勝負と考えていました。
大学院の卒業論文は網膜芽細胞腫のcell lineであるY79にall-transレチノイン酸をふりかけて血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)遺伝子発現が誘導されることを証明したものでした。大学院2年生の秋,このテーマをそろそろIOVS(Investigative Ophthalmology and Visual Science)に投稿しようかというときの出来事を思い出します。光刺激が網膜内のall-transレチノイン酸濃度を上昇させるという論文を偶然Pub Medで見つけました。ひょっとするとY79に光刺激をしたらVEGFが誘導されるかもしれないという仮説がひらめきました。その晩,研究指導医の先輩と居酒屋で酒を酌み交わしながら,その話題に触れたところ,先輩は内科医でありながらその仮説に大変興味を示し,実験の細部にわたり話が弾みました。
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