連載 往復郵便・第14回
もやもやを残したまま歩き出すこと
榊原 千秋
,
頭木 弘樹
pp.412-413
発行日 2022年9月15日
Published Date 2022/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688201903
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「相談には箸でつまめる相談だけでなく、箸ではつまめないスープみたいな相談もある」。前便の頭木さんのご指摘には膝を打ちました。人は言葉に表せないような思いを抱いており、ただ、文学的なものがそれを指し示す可能性があるというのも分かる気がします。
かつて私が交通事故で瀕死の状態になったとき、“大いなるもの”から「もうあなたはいいわ」と全否定されたような気がしたと書いたと思います。事故後、しばらくは自己肯定ができず、「いつ死んでもいい」という思いで日々を過ごしていました。当時、何かの本を読んでいたときに「『いつ死んでもいい』という考え方は正常ではない」といったことが書いてあるのを見て、それに正されるどころか、「この著者は何も分かっていない!」と腹を立てたのも覚えています。
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